ステージ上では、客席から見えない様々なことが起っています。と言っても、ハプニングの連続という意味ではなく、「演者の心の中で」ということ。くしくもライヴ会場では、集中力が途切れそうになる原因が多々あります。もちろん、プロとして、そうならないように最大限の努力はしますが・・・
僕らソロギタリストが演奏する場所は比較的小さく、しかもステージと客席が近いので、ほぼ「まる見え状態」です。よって、とくに、最前列に座られるお客様の知らず知らずの動きが集中力の低下につながることも多いんですよね。中でも、一番辛いのは、「足でリズムをとるタッピング」。もちろん悪気があってのことではなく、自然と演奏に乗ってのことなんでしょうが、演者からしてこれほどツライものはありません。しかも、バラードのときでも、あったりします。100%、自分とはリズムの取り方やノリが違いますし、目線にも入るし、かすかに音も聞こえる・・・で、こちらは気にし出したら、さらに気になる、という悪循環に陥ります。対策として、目を閉じたりして何とか気にならないようにするのですが、手元のポジションが分からなくなるなど、あまりいい方向にいきません。じつは、あるライヴで、そういう方がいらして、我慢できずに注意したことがあるんですが(これ1回きり)、やはり、一度その手のことを口にすると、そこからメンタル的に落ちていってしまいます。ステージに立つ者として、「口にしてはいけないこと」かもしれませんが、その時だけは耐えきれませんでした。まさに試練の一瞬でした。
あと、最近は少なくなってきたのですが、「開演前アナウンス」を流しても(マナーに関するお願い)、ライヴ中にカメラで撮影する人がおられたりもします。これも悪気はないのでしょうが、僕にとっては、やはり集中力とテンションが下がる原因となります。アーティストによっては、動画、写真ともOKという人もいますが、僕の場合は集中力に影響するので、すべてお断りしております。僕のトークとか聞いて「すごく軽い感じ」を持たれるかもしれませんが(笑)、演奏に関しては、かなりの強度で集中しておりますし。
ステージでの最高の集中の瞬間とは「何も考えないこと」だと思います。頭の中は透明な状態。で、心の中は音と共に感情が動いている状態。そして、それがギターに共鳴して伝わっていく、と言えばいいのでしょうか。逆に、集中を妨げるようなことが気になりだしたら、頭と心のバランスが崩れ始める、ということになりますね。
僕は、プロとして、どんな状況下においてもしっかりと悔いのない演奏をする、ということを目標に頑張ってきました。ので、仮に、会場に騒がしい人がいたり、ちょっとざわついた感があったりしても、自分の演奏で静かにさせる(!)くらいの強度を目指しております。が、やはり僕も生身の人間で、正直なところ、そのようなことに影響されなかったことはありません。まだまだ「修行」が足らない、という証拠でしょうか・・・。
これからもステージ上で、自己発生的なものや、機材トラブルなども含め、数々の試練に遭遇すると思いますが、そんな状況の中でも平然としていられるギタリストでいたいと思います。そして、お客様と一緒に、「その時、その時しか味わえない」楽しいひと時を過ごしていきたいと願っております。心境的には「桜」ですね。短い時間にパッと咲いて、いさぎよく散っていく。でも、人の心の中で咲き続ける・・・今後も、そんな理想を追いかけていきます。
ありがとう。
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